2001年ヨーロッパツアー報告 ”そしてまた今日も雨が・・・”
本年度のヨーロッパツアーは参加メンバー7名と割と少な目であった。しかし、その顔ぶれは十分に濃く身軽でかつアクティブな行動が出来た事が印象的である。
それではここで参加者を紹介しよう。
永野 雅敏♂
 ヨーロッパツアー参加3度目の正直。ツアー参加者はもとよりヨーロッパフライヤーをもしのぐフライトと数々の伝説を作り上げた子持ちフライヤー。
永野さんレポート

永田 雅美♂
 ジオ関係者ではなく他校からの参加者。スペイン等での数々の海外フライト経験を持つ。
NEW7/24
永田さんレポート

吉岡 正文♂ 
 このツアーのために会社を辞めた(?)自然体でありクライマーでもある元ボクサー。行きの飛行機の中からスチュワーデスさんとバトルを繰り返す。     

山田 昌美♀
 紅一点の参加者。仕事がガーディニング関係の為、花や廻りは欠かせない。体調がすぐれない、ハングが怖いなど無線は入るが結局ロングフライトを見せ、セールプレーンと張り合っていた。私のギャグに冷たい。8/16レポート到着

清野 雅弘♂ 
 正に安全第一、木には近ずかない飛び。私のくだらないジョークに耐え、かつうけてくれた貴重な参加者。
桐木 喜章 ♂ 
 ジオスクール出身。飛びに対して冷静でありヨーロッパ滞在経験が豊富で食事の事は正にプロ。 
中台 章 ♂ 
高速道路では何時も限界に挑戦。参加者の希望を叶えるべく奔走。何時でもスパイラル、翼端、B-ライン等を駆使し最短フライトを高コンディションの中で行う。

成田へGO!
 朝5:00にショップに集合。一路成田へ。成田では永田さんとの待ち合わせ。メールでは、やり取りがあるものの面識は初めてである。無事合流をし、次々と参加者が集まり全員集合となる。しかし、人が多い!何と出国審査に長蛇の列!後少しで乗り遅れそうなほど時間が掛かる。
全員無事機内へ 
 離陸し水平飛行になると勿論、飲み物のサービスが始まる。ここで殆どの参加者がこのツアーの先行きを案ずるほど酒を飲み出す。しかも、吉岡さん、お酒ドクターストップでしょ?
 フライトも8時間を経過すると暇になる吉岡さん座席についてるスイッチ全て押しスチュワーデスさん呼び出す。金髪のおねいさん来るが英語で話し掛けられ石と化す。映画3本見てドイツはフランクフルト空港到着。ここからはチロリアンエアーでインスブルックまで。プロペラ機で観光飛行気分で移動。しかし、ただではこのトランジット(乗り換え)は終わらない。税関で呼び止められ荷物検査だ。運悪く参加者でタバコを5カートン持っていた人がいた。そして、ゲートを出た私を税関職員が手招き。全員バッグを開けろと言われる。少し横暴に対処している私に職員の一言「こんな態度の悪い日本人は初めてだ!」すいません日本人のイメージを壊してしまいました。そして、追徴課税を払い無罪放免。きっとブラックリストだと確信した。  観光気分のダシュ8型プロペラ機はドイツの平坦地からオーストリアに近付く、オーストリア・アルプスの素晴らしい光景が目の前に広がる。飛行機はフライトエリアのアーヘンゼー(アーヘン湖)を低高度でフライトし、谷あいのインスブルック飛行場に滑り込む。南風が強く機体が大きく上下に揺れる。そして、夕方の清々しいインスブルックに降り立つ。このシーズン、インスブルックは21:00以降まで明るく、とにかく一日が長い。
 早速、レンタカー会社に行くが何故か職員が居ない。嫌な予感が・・・。
とり合えずプロデザイン社、社長のホフバウアー氏の携帯に連絡。イタリアにいるとの事で電話を掛るが事態は改善しない。仕方なくタクシーでホテルまで。勿論、超大型トレーラー付きタクシーを手配。やっとの事でホテル着。部屋にチェックインし、その後ホテルのテラスで軽い食事とビールで乾杯。20:00を回るが明るい。屋外での飲食はヨーロッパならではだ。明日に備え早めの就寝。


DAY 
1
 ホフバー氏が朝レンタカーをホテルまで届けてくれる。そして10分の移動後ノイシュシュフとエリアへ到着。ここは高低差600mと今ツアー最も低いがランディングが大きく、リフトへのアクセスも良い。
午後券が安いので少しノンビリして、いざテイクオフへ。緊張のヨーロッパフライトが始まる。一本目と言う事もあり皆さん慎重に行う。後で聞いたのだが皆さんスタ沈の嵐だったそうです。それぞれ2〜3本フライトし満足度の高い初日となった。
派手にアクロをしているパイロットを発見!あの飛びはマイク・クングに間違いない。ドイツDHVテストパイロットでアクロバットパイロットである彼とは1年ぶり。再会を喜び合う。彼によると9月に開催されるアクロバット選手権にオーストリア代表として出場するため、イーデルのグンター・マーカスと練習しているそうである。シンクロされたその飛びは実に素晴らしい。

リフトの最終は16:30で、この後テイクオフにいると、飛ぶか、または歩いて下山かの選択となる。18:30まで フライトし第一日目のフライトを喜び合い豪華な食事に舌ずつみを打つ。

本日の記録:最大到達高度(以降M/A)2900m 最大フライト時間(以降M/T)80分

DAY 2
 今朝も朝から快晴。9:30分ホテルを出てノイシュに移動。月曜という事もあり昨日より空いている。しかし平日でも20名程度はフライヤーが集まる。パラのタンデムは大流行で観光客を次から次へ飛ばしている。
 早速、テイクオフへ。私は何時ものようにランディング横”ウルストランド”(ソーセージの国)と言うフライヤーが開いた小さな売店でコーヒーを飲みながらメンバーのランディングを待つ。因みにここではホットドッグやハンバーガーが最高に美味しくいつもお昼はここで食べる。今年の新メニューにカレー味ソーセージ炒めが登場しソーセージファンの私の心はもはやくぎずけ!メンバーは少しずつランディングのバレーウインドに慣れてきたようだ。
 夕方になる頃、突然無線が入る。「吉岡トップランしました」私は?!何故なら彼の技術ではトップランは難しいと考えていたからだ。ランディングした桐木さんに聞くと。テイクオフ後、高度を上げセンタリングしたが高度が低くリフトに気を取られフォローで斜面に激突したという事だ。後で調べるとバリオがGにより接触不良を起こすほどであった。
その後16:00をまわり順調にソアリングを楽しむ。その中に吉岡さんはいない・・・。そして運命の無線が・・・。

「ラインが絡まって取れません」??!!詳しく聞くとスタ沈後、ラインをくぐってしまいラインの絡みが取れないという事らしい。よって、テイクオフ出来ないと言う事だ。他の人は全員ランディングした後だし後10分でリフトが止まる。リフト乗り場に急ぐ様指示。何とか下山に間に合う。勿論皆でカメラを構えお出迎えした事は言うまでもない。ここにツアー史上初、絡み下山の金字塔が打ち立てられた。


これよりメンバーの中では、必ず吉岡さんを最後にしないよう気を付ける事という暗黙の常識が作られた。その夜はメンバー全員からラインの解き方レッスンを受ける事になる。

  5:30ホテルに戻そして楽しい夕食。ここドナホフというペンションホテルはとにかく食事が美味しい。朝はバイキング形式のオーストリア式朝食でパンや多種多様なハム、チーズは基より、ベーコン、スクランブルエッグ、シリアルなど毎日食べても飽きない。
夕食は前菜、スープ、サラダ、デザートなど全てフルコースであり、しかも朝、肉、魚、菜食主義者用のメニューから好みの物を選べる。





本日の記録:永田さん3本で90分フライト。
山田さん一本だけで60分を越え余りに疲れランディングにフレアー後、倒れ込み大笑いされ外国人のファンを増やす。
/A2700mやや不安定。






DAY 3
 今朝も快晴で朝は毎日7:00に朝食を食べる。天気予報を見ても高気圧にドップリだ。そろそろタイトルの雨に付いて語る時が来た。”そして今日も雨が・・・降らない!しかも降る様子さえ無い!
 今日はシュリック2000エリアへ移動。ここは高低差1200mの絶景エリア。しかもホテルから5分という最高のエリアだ。しかし何故かリフト駅に人がいない・・・。何とケーブル故障で本日休業である。この時間から高速で移動もしたくない。よっていつものノイシュへ。
エリアへ到着すると今日は過去3日間で一番コンデションが良い。午前中から確実に滞空時間が稼げる。メンバーも慣れてきて余裕がある。そんな中、ビッグウエンズデーはチューズデー(火曜)に起こった。午後テイクオフした永野さんは、徐々に高度を上げ、既に山頂に付けた。ここで昨日まで割と大人しい飛びの彼に悪魔が宿った。無線が入る「永野です。現在3000超えました。チラタール(隣の谷)が見えます。行っても良いですか?」私は平然ときっぱり言いました「ダメです。」その後、彼は視界から消え無線も通じない。
 かすかに「・・・なか野・・・現在・・・雲低さんぜん・・・」彼は谷の東側尾根に付けインスブルック方向に向かっているらしい。そして遥か5km以上先の尾根に点として現れた彼は無線でこう伝えて来た「現在3950mヨーロッパ橋手前です。」その後、谷を一周し戻ってくる。実にフライト時間100分を超えるフライトである。その日から他のメンバーには決して「永野さんに着いて行ってはいけません。」と忠告した事は言うまでも無い。

本日の記録 高度3950

DAY 4
 今日も雨は降らない。メンバーも不安をつのらせる。もしこのまま雨が降らなければ観光は無しだ。皆の心の中に観光もして見たいと言う欲望と飛びたいと言う葛藤が生まれる。そろそろ日焼けも限界だ。

 早起きし今日はアーヘンゼーと言う湖まで移動。高速を順調に飛ばす。ここは湖の上を飛べる景観の素晴らしさでは最高のエリアである。しかし、ここ数年天候に恵まれずツアーで飛べない事もある。ランディングは他と比べると狭く電線や着水の危険もある。ランディング確認後リフトで山頂へ。天気予報では夕方から雷雨の恐れがあるため、ぐずぐずしていられない。私がダミーで飛ぶが既にサーマルが発生し良いコンデション。景色は素晴らしいの一言である。がメンバーを少しでも早く出す為ランディングへ急ぐ。その後、皆順調とは行かずテイクオフでてこずる。サーマルのため、やや不安定だからだ。永野さんは今日は体調不良のため、ドライバーをしてくれた。しかし、またもや彼の中に悪魔が宿った。何とか無線誘導でランディングをした皆を見るや否やリフト乗り場へ急ぐ。彼以外のメンバーは湖畔反対側レストランでリゾートライフをエンジョイ。昼食を取ることに。ドイツ語メニュー・ロシアンルーレットをオーダー(適当に何だか判らない物をオーダーする)する頃には既に皆ビールを飲んでいる。ここではたと気が付く事がある。何故か皆いつでもビールを片手にしている、当然フライト前でもだ。今回のツアーのビール消費量は記録的である事も再認識した。


食事も中盤になる頃、無線で永野さんからテイクオフしたと連絡が入る。しかし彼もこのエリアに馴れているので特に注意を払わなかった。それに対岸にいるので、その動きは手に取る様に判る。





食事が終わる頃、またもや無線が入る。「皆どこで食べているの?」場所を詳しく教えると何と現在湖の北側ドイツ国境方向にいて、これからこのレストランまでフライトして来るとのことだ。

結果的に何とアーヘンゼーを1周をしてしまった。最高到達高度3950m100分で湖を完全制覇した。ちなみに当日フライトしていたマイク・クング、ノバ社トニーベンダーでさえ3800mで有った。もはや彼を誰も止めることはできない。
その夜、夕食も食べられず寝込む永野さんには正に天罰が下ったと言える?
永野さんをランディングで回収後、直ちにマークバッハヨッホに向かい最終リフトでテイクオフへ。西から黒い雲が近づく。全員をテイクオフさせた後、私もフライトするが全く高度が落ちない。直ぐに皆に降りるよう指示したものの皆さんソアリング中(?)あらゆる降下手段を駆使し皆と同高度に下げ無線誘導開始。ランディングすると風が強くなり高速に乗る頃には雷雨となる。待望の雨である。
今回のツアーではプールにもサウナにも入る余裕は無い。しかも夕食前にシャワーすら浴びるチャンスが無い程フライトしている。

DAY 5
 朝から待望の悪天候である。飛べない事でホッとする事は珍しい。朝から観光に向け準備。まずプロデザイン社に見学に行く。そして、インスブルック旧市外へ。午後まで観光し初めての観光客気分を味わう。山田さんと私はガーデニングショップ巡りをする。その後、お城見学でシュロブアンブラスへ。何故か気味悪がる人が続出。本日ガソリンスタンドで買い物中、カーラジオから流れるテクノポップにノリノリで頭を振る吉岡さんが発見されたと山田さんから報告を受ける。中休みを存分に楽しむ。

DAY 6
 朝から天気が優れず午前中はショッピングに費やす事に決定。巨大地元ご用達ショッピングセンターを堪能する。
14:00頃ノイシュにてフライト開始!1日半ぶりのフライトを堪能する。やっぱりフライトは良い物です。2本程度フライト。ここで気が付いたのは観光も結構疲れると言う事です。しかし、これだけフライト本数も増えると疲れが貯まるのも自然です。そして、ゆっくり食事、いつも最低2時間は飲み物を飲みながら夕食を食べる。日本では考えられない事だ。食事を含め全ての時間がヨーロッパ時間となり、ユッタリと時間を過ごす事にメンバーも馴れて来たようだ。この頃になると夕食も朝食も自分の席が確定している。吉岡さんと永田さんは、いつでも2人分け合って食べている。と言うよりも小食な永田さんのメインからデザートまで吉岡さんが食べているという方が正しいだろう。毎回飲み物の会計で誰が何杯飲んだかを覚えていなければ、ならないのだが酒が入ってうる覚えの人が毎回続出。睡眠に関しても永田さんは毎回10:00頃にはベッドに入っていた。私自信も必ず12:00前に寝ていた。今回のツアーは朝型の人が多く朝の散歩を楽しんだ人も多くいた。そして、最終日の明日に備え、本日も早めに就寝。

DAY 7
 最終日である。今日は是非シュリック2000からフライトしたい。リフト工事を想定し、前日よりジープで送迎をして貰えるよう手配。朝8:30にドライバーに電話を入れる。ところがドライバーによると本日からリフトは再開との事。急いでリフト乗り場へ。5分足らずで到着。ゴンドラに乗り込み、いざテイクオフへ。ここはいつ来ても景観が素晴らしい。私にとっては夏も冬も良くフライトをするエリアである。メンバーも、しばしその景観に見とれる。ダミーの私は急いで装備を点検、離陸。テイクオフ前には穏やかなサーマルが存在し数回センタリングを行う。テイクオフで待つメンバーに、このエリアのサーマルポイントを紹介しつつ早めにランディングしなければならない。サーマルでは反射的に手が動こうとするがそれを無視する。しかもランディングに近づくにつれ明確にサーマルを感じる。勿論翼端折で降下に勤しんだのは言うまでも無い。
その後、メンバーも思い思いにフライトを楽しむ。そして2本目を飛ぶためすぐに上がる。
2本目は全員シュリックからノイシュまでのミニクロカンだ。私も車をノイシュのランディングに移し皆を待ち受ける。全員十分高めにノイシュのソアリングゾーンに到達しソアリングをする。午後に十分にソアリングを楽しんだ者から次々にランディング。

「それでは最後のソアリングをしに行きましょうか?」と尋ねると全員が「もう十分です。」と口を揃えたように答えた。その手には全員ビールが握られている。山田さんは2時間を越えるフライトにランディング後、腰を抜かし立ち上がれず、またもやランディングの人気者となる。 全員が既にヘロヘロである。もし仮に後一週間飛びまくったら確実にリタイヤやドクターストップが出る事であろう。
今年のツアー正に記録破りのツアーであった。